胆道閉鎖症の子どもを守る会の40年間の活動と成果

2016/7月掲載


胆道閉鎖症の子どもを守る会は1973年にアメリカから胆道閉鎖症の手術のため来日した生後8か月のテレサローズちゃんを助ける会の発足が始まりです。
以来患者家族の支援活動を40年間続けています。その間、お互いに支え合い、患者家族のQOL向上のための施策、制度、法律の制定などの実現に努力してきました。


Web構築担当 とおる近影

胆道閉鎖症の啓発活動

早期発見、早期手術
・便色カードを母子手帳に記載が実現
 胆道閉鎖症は、早期に発見し治療することが最大の課題です。胆道閉鎖症を早く見つけるため「母子手帳」に“白色便と黄疸をみたらまず胆道閉鎖症の検査を”という一項目を記載してもらうよう厚生省に働きかけ、1987年に記載が実現しました。
続いて記載内容の改正と便色カラーカードの普及に取り組みました。各支部が自治体に対して配布の要請をするとともに、厚生労働省にも母子手帳にカラーカードの記載を働きかけてきました。カラーカード記載を求める熱心なお母さんの強い働きかけもあり2012年の母子手帳改訂に合わせて記載が実現しました。

「カラーカード記載を求める熱心なお母さん」たちは、肝ッたママ'sさんのことです。

・USBAによるマススクリーニングの研究

胆道閉鎖症の診断法として尿中胆汁酸の計測による検査法があります。この検査を新生児のマススクリーニングとして行い、確実な早期発見に繋げるという研究会が2004年に始まり、各地で早期発見フォーラムを開催、普及啓発を行ってきました。現在、沖縄や長崎で普及しつつあり、沖縄では成果もでてきています。


病気の理解のための活動

勉強会の開催

 「守る会」は1974年の第一回胆道閉鎖症研究会に参加以来、会として病気の理解を進め、日々の相談活動に役立てています。また、毎年行われる支部総会や、各地の支部会には胆道閉鎖症の治療に携わる先生に参加していただき勉強会をしてきています。
 現在、多くの患児が肝移植をうけていますので、毎年、「移植医と語ろう」研修会を開催し、移植医療の勉強を続けています。

書籍の発行

病気の理解増進のため、「胆道閉鎖症のすべて」などを出版


最新版は事務局にて発売中です。詳しくはこちら

臓器移植の推進

脳死・臓器移植シンポジウムの開催・請願署名などの実施

1986年日本の女の子がアメリカで肝蔵移植に成功、1987年には守る会の患者家族会員がオーストラリアで初めて脳死からの移植をうけ、その後多くの患者が次々とオーストラリアに渡り移植をうけました。受け入れ先の豪州ブリスベーン王立子ども病院の危機を救うための募金活動もおこないました。守る会は国内で移植が出来るようにするための活動を開始しました。

生体肝移植の実施と拡大

1989年、杉本裕也ちゃんへの生体肝移植が実施されました。それから7カ月後の1990年6月京都大学で実施、次々と生体肝移植が実施され始め、移植が現実的な医療の方法として道が開かれはじめました。
しかし、生体肝移植は健康な人(家族)にメスを入れるという倫理上の問題が残ります。
この問題の解決には亡くなった人から臓器を提供していただく以外になく、脳死を人の死とした脳死移植の実施を実現しなければなりませんでした。

脳死臓器移植法の成立

BAの会は移植シンポジウムや学習会を継続する一方、1994年から97年にかけて厚生省への陳情、要望等の提出請願書の提出、国会への働きかけを行い、臓器移植の法制化への活動を強化していきました。「臓器移植推進連絡会」も結成され、BAの会も参加し活動、「脳死・臓器移植に関する法律」が成立、1997年10月施行されました。

脳死・臓器移植の改正

臓器移植については「家族」による意思確認で臓器提供を可能とするよう臓器移植法の改正を国会に要請してきましたが、2009年、法改正が実現、15歳未満の臓器移植の道が開かれました。



脳死移植がこれまでより大幅に増えるようになった09年の法改正だけでなく、97年の脳死臓器移植法にも守る会は働きかけを行なってきました。
まだ残された課題も数多くありますが、はじめの一歩を作り出した、その一助になったのは確かです。

患者家族のQOLの向上へむけての活動

医療費の公費負担制度の確立へ向けて

若い家庭にかなりの負担を強いていた医療費を公費負担にして欲しいという切実な願いがもとになり、35,000人以上の署名を集めて国会請願や厚生労働省との度重なる面談を続ける中で、1983年12月小児慢性特定疾患と認定されましたあとに続く患者や家族に朗報がもたらされたのです。



今では当たり前のように受けられる医療費の助成。私も18歳まで助成を受けていて、当時20歳まで医療費が掛かりませんでしたが、これは会の先輩方の粘り強い活動があってこそだと後になって知りました。

小児慢性特定疾患の法制化

「難病の子ども支援全国ネットワーク」の親の会に参加する患者団体と協力、厚生省母子保健課と折衝を重ね、治療費の一部を負担することにはなりましたが、2004年の児童福祉法を改正し小児慢性特定疾患事業は法律に基づく安定的な制度になりました。


「法律に基づく安定的な制度」とは、義務的な予算が付くってことです。これは財政が厳しくても法律がある以上は、必要な分は毎年確保しなくてはいけないということになります。

移植者、障害者手帳一級に認定

国に対して、胆道閉鎖症を特定疾患治療研究事業の対象疾患に認定するよう要請するとともに、内部障害として認めるよう働きかけを繰り返し行ってきました。
障害認定については、薬害肝炎の国の責任問題もあり、2010年から肝障害が内部障害として認められ、国会議員に強く陳情したこともあり、肝臓移植者は1級に認定されることになり、移植者の治療費の負担は大きく改善されました。

自己肝の患者は寝たきりにでもならない限り手帳をもらえないという不公平が生まれましたが、内部障害と認められ移植者が救われたことは画期的な変化でした。

指定難病について

難病患者が治療費や福祉の支援を受けられる制度にするため、厚労省は2010年から新しい難病対策の検討にはいりました。他の団体とも連携をし、国に公平公正な難病対策の実現を訴えました。漸く2015年5月胆道閉鎖症が指定難病として承認されました。



本当に大きな成果です。ボーッと見守っていたら、SNSで要望を書き込んでいるだけなら、叶わなかった未来。リアルタイムで進捗を聞いていた身としても関わったすべての関係者の皆様に感謝です。

障害基礎年金の受給申請促進

BA患者の状況は年々改善されてはいますが、入退院を繰り返す場合も多々あります。また20才をこえる患者は500人近く、就業等の困難をかかえています。こうした場合社会保障制度の一つである「年金制度」の適用が可能となってきます。生活権を保証するものとして、年金受給の申請を行うよう助言と指導をすすめています。


当面の課題と将来に向けて

20歳以上の治療費の負担軽減と福祉の充実

 20才以上の患者が500人近く、医療費の負担や、就労の問題は喫緊に対策が必要です。現在、国は、新しい障害者制度と難病対策の検討を行っています。BAの患者が安心して治療し生活出来る制度になるよう国と折衝し訴えていきます。

青年部の本格的活動

2001年に「青少年部」を設置しましたが、親睦が主な活動でした。2011年には定期的な会合が開かれるようになり、その結果、2012年には成人患者の実態調を行うなど本格的な活動がスタートしました。



青年部(正式名:青少年部)はFacebookページを開設しています。詳細は、守る会公式Facebookページからご覧下さい。Facebookアカウントはメールアドレスさえあれば誰でも作成できます。


以上が43年間の活動とその成果ですが、まだ多くの課題があります。
胆道閉鎖症の子どもを守る会は、これからも患者家族のQOL向上ため活動を続けてまいります。